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いつもの、そんな日々。

最低月一更新を目指します。日常、読書、夢、映画、ゲーム、興味のあるものを取り扱います。

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愛しき空白

 世界は思いの外静かなようだ。辺りに散らばる空気を吐息で撫でてみる。それは透明色になってどこまでもどこまでも飛んでゆく。否、泳いでゆくといった表現の方が正しいかもしれないが、わたしは彼らがどの様なかたちで存在し移動しているのか分からなかったのでどちらでもよかった。
 わたしはあなたの器の隣に座り世界を見ている。先程表現したように世界は思いの外静かだった。わたしが声を発してみても、鏡のようにわたしの声がわたしの元に帰って来るのみで、反射したその音だけがこの世界に生まれてくる音なのだった。あなたは目を開けず、わたしはあなたの頬を撫でた。
 全ての空気の底でわたしはもう一度息を放つ。あなたが吐く事のないそれをわたしは全世界に晒す。あなたの息はカーテンから差し込むうららかな光か何かのように思われてわたしはいつもあなたの吐息に安堵と哀愁を覚え、そこに哀しき狂言にも似た反射を見るのだった。
 そしてわたしは思い描く。嗚呼、わたしはあなたの頽廃の体に惹かれ恋人のようにその声を慈しみ、時にあなたは母なる呼び掛けの如く優しい光をわたしに注いだものだった。それらは今は誰かに抽出されて空白だけが愛らしく残る。
 わたしは哀しき共存への拒否を感じて目を閉じる。世界はまだ声を発しない。あなたへの恋文を待つわたしは全てをあなたへ捧げてもよいのに、何故こうもあなたとわたしの存在は対立するのか。その感情はこの世界で生まれわたしの中に帰ってゆく。
 誰もいないこの頽廃の世界には抽出されたあなたの体とわたしだけが残される。空白、虚無。やがて世界はわたしだけが残された。
 わたしはあなたの頬を撫でそこに生まれる空白を愛した。
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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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